レオニスの泪

勇吾と会ったなら、自分は泣いてしまうだろう。

勇吾への気持ちは、まだ残っているだろう。

勇吾を恨む気持ちも、あるに決まっている。


そう、考えていた。
でも。
実際は、そうじゃなく。

勇吾と、相手を見た時。

ある意味再会を焦がれていた私の心臓はドキリとしたけど。
呼吸を忘れるくらい、驚いたけど。

その他には。

何も感じなかった。

もういい、と思った。


ーもう、いい。

もう、あの人の事、許せる。


結局、自分が持ち続けていた、勇吾への、愛の様な未練の様な、憎しみのようなものは。

許せない、許しちゃいけない、という感情が発端となっていたのだと知った。

それは、相手に伝わることがないから。
実際は自分の身体、心を蝕んでいたんだと、思った。



長い事、持っていた、肩の荷が下りた様に感じた。



私は、勇吾をもう、好きじゃない。

何とも、思ってない。

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