レオニスの泪
こじんまりとしたペコルの店内。


惣菜パンは、ほとんど売り切れている。



―お、かろじてあった。良かった。



お目当ての焼きそばパンまっしぐらで突き進み、急いでトングで捕獲する。



冷蔵庫に陳列してあるコーヒー牛乳の瓶をひとつ取って、颯爽とレジへと向かった。



が。



―混んでるな。



いつもなら、昼過ぎなんて空いている筈なのに、今日に限って、長蛇の列。




―あ、くるし…



最後尾に付いただけで、呼吸が浅くなってくるのを感じる。



またか、と眉間に皺を寄せた。



一体なんなんだ、これは。



こないだみたいなことになったら大変だ。



もしもなったらどうしよう。



困惑は不安へと繋がり、息は更にしにくくなったようだ。




悔しいが、今浮かぶのは、あのベビーフェイスの言葉のみ。



ゆっくり息を吐く。

ゆっくり吸う。


それだけのことが、何故こんなにも難しいのか。



若干冷や汗も掻きつつ、自分の異変を押し止めるのに必死だった。

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