レオニスの泪

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月曜日は生憎の天気だった。



―雨、か。



徒歩で慧を保育所に送ってから、バスに乗るのに、停留所へと急ぐ。




洗濯物は乾かないけれど、雨の日は、嫌いじゃない。



いつも自転車で疾走するのは疲れてしまうから。



たまに音楽でも聴きながら、人に運転を任せて、行き帰りの時間ぼーっとできるのは、嬉しい。


少し贅沢な自分だけの時間、だ。


ウォークマンに、お気に入りの曲を忍ばせて、イヤホンから出てくる音に身を任せながら、車窓から外へ目をやった。


無論、雨の日の車内は混雑していて、座れなかった私の腕に、時折隣の人の鞄がぶつかる。




―あれ。



熱気のせいか。


やはり、酸素が薄くなっている気がする。


予防の為に着けたマスクがいけなかったのか。




「はっ…」




短く浅くなる息遣いを、必死で堪えた。




―うわ、苦しい…



我慢しようと思えば思う程、苦しさは増していき、ついには外の景色どころじゃなく、嫌な汗も出てきた。




―お願い、早く着いて。早く。




祈るようにして、ぎゅっと目を瞑った。





「次は……大学病院………」




朦朧としてきた意識の中で、かろうじて途切れ途切れに聞こえてきたアナウンスに、救われたような気持ちになった。
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