レオニスの泪


「どこで拾ったんだろう?」

「さぁ…ママ聞きそびれちゃったんだよね。」

「まだ、あのお医者さんとあうこと、あるの?」

まんまるい目をぱちくりさせて、興味津々に慧が訊ねる。

「いや、そんなことないよ?たまーに、かな。」

「あのひと、また来る?」

「うーん、どうかな。」

のらりくらりとなんとか慧の質問を巧(うま)く交わしているようないないような。

ピタリと止まる、慧。

ややあって。


「ママまだどこかぐあいが悪いの?」

「…え…」


いつか。


フラッシュバックする、いつか。

いつか、、いつだったか、少し前。

慧は、似たような事を、私に言ったような気がする。


ーあの時、慧は何て言ったんだっけーーーー


思考が彷徨った瞬間、携帯がヴーヴーと鳴り出した。

ハッと我に返って。

「ち、違うよ。別に具合が悪くて診てもらったんじゃなくて、たまたま!たまたま偶然道端で会っただけ。」


取り繕ったみたものの。

その答えが、正しいとは思えなかった。



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