レオニスの泪
玄関を出たのと、車のドアをバタンと閉めた音が聞こえたのは同時だった。
鍵を閉めて、階段を降りると、神成がふわりとした笑顔を浮かべて、車外に立っていた。
「こんばんは。」
神成がそう言えば、息が白く浮かんで消える。
「こ、こんばんは」
前回とは違う、いつも通りの穏やかな神成に、少しホッとする。
同時に安堵感からか、既に目の渕に溜まりだす涙。
「慧くんは、もう眠った?」
ひそひそ、囁く様に訊ねる神成に頷くと、彼は助手席のドアを開いて私に乗る様促した。
「じゃ、今日は寒いから車の中で話そうか。」
「ーーいいんですか?」
「うん。」
てっきり家かと思っていた私は、その提案に感謝しながら、勧められるままに助手席に乗り込む。
車の中は暖かく、ミントの香りがした。
それから。
「はい、珈琲。」
「え、あ、はい……ありがとうございます…」
ステンレスの水筒から、湯気の立つ珈琲の入ったカップを私に渡してくれる神成。
女子力の高さに驚く。