レオニスの泪
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「はい、心電図も異常なし。胸部X線も、異常なし。」





休み時間を、少し早めに取らせてもらって、内科を受診した。


といっても、週始めなんて激混みな訳で。

更に予約なしなんて、致命的。


診察券を置いてから、仕事へ戻り、合間を見計らって受付に順番を訊ねる、という具合に、小走りに行き来した。



内科へは、数年前に原因不明の咳が長引いたことで、近所の病院―それこそ川上診療所―に紹介状を書いてもらって掛かったという経緯があったので、診察券があるのは非常に助かった。



のだが。




「…異常なし、ですか…」




もしかしたら原因不明の難病なのか?と期待外れの診断に肩を落とす。




「うん…。なぁんもないよ。たださ、症状を聞いてると…葉山さん、夜眠れない日が続いてるんでしょう?」




中年の男の先生が、椅子に深く腰を掛けて、腕を組んだ。





「はい。なんか最近は、夜中にも息苦しく感じることがあったりして、寝つきがどんどん悪くなっています。」



そうなのだ。





昨晩何の前触れもなく、急に息が苦しくなった。


少し経てば治まったが、心臓は暫くバクバクと波打っていた。





「大きなストレスを抱えてるっていう心当たりはある?」






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