レオニスの泪


その指を。

その手を。

まだ震えている右手で掴むと、神成の人差し指がピクリと反応した。


「……きょ、う……し、仕事に、行った……ら……」


ぎゅっと無意識に、力が込もる私の手を、神成が唇から放れた手を返して、握り返してくれる。

そのせいで、自分の手は、なんて冷たいんだと、実感した。

そして、そんな身体の中心にある、ドロドロを。


「早く、行った、せいで……あの人、しかいなくて……と、扉、閉められて……か、らだ……触られて……!」


カタカタと、強くなる震えと一緒に吐き出した。

瞬間、私の右手に掴まれている左手はそのままで。


「言わせてごめんね。」


謝る必要等ないのに、そう言って、神成は右手で私の肩をそっと引き寄せた。


「か、金森さん、来てくれたから、良かった……けど……」

「知ってる。金森さんが電話くれたんだ。僕がメールをしたのはその時。」

胸を貸してくれている神成の顔は見えない。
声だけが優しく響く。


「金森さんが?」
「そう。」
「…………」

連絡しろと、こないだ怒られたばかりなのに。
どうして連絡しなかったんだと言われるものだと、予想していたのに。
いやむしろ、最初から知っていたのなら、会った時から怒っていてもおかしくないし、メールや電話でもそう言えたはずだ。

なのに。


「身体が、冷たいね。」


私に、体温を、くれようとする。




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