レオニスの泪
パキ、と音がした。
現実(リアル)にしたんじゃなくて。
私の中から。
「私、先生の事が好きだって言ったんですよ……?」
掛かっていた箍(たが)が、幾度も幾度も抑えてきたものを、抑えきれなくなって、壊れた音だった。
「どこにもいないなら……どうして、私を見てくれないんですか??」
「祈さん……」
「大切な人がどこにもいなくて、こんな風に私に触れたり、先生の家に行ったりしていいなら、どうして、私を好きになってくれないんですか……?なれないんですか?」
「それはーー」
「先生は、まだその人の事が好きなんじゃないですか?先生の中にその人は住み着いているのに、どうして、私を守るとか、簡単に言えちゃうの?」
人の温度は、温かい。
自分より大きなひとは尚更。
冬は寒いから。
ひとりはさみしいから。
だから。
「私はっ、先生が、好きなんですっ」
「祈さ……!」
温度をくださいーーーー
無理やり押し付けた唇は、血の味がした。