レオニスの泪
自分の血の味だ。

子育て一つ、仕事ひとつ、恋愛の駆け引きひとつ、ロクにできない。

二十歳がずっと大人に思えていたあの頃の自分に教えてやりたい。
いつまで経っても、大人なんてやってこないと。
どれだけ待っても、思い描いた未来なんて歩いては来ない。

ただ、時だけが過ぎる。
質が悪い事に、加速して過ぎていく。
例えるなら、時間はコンテナを運ぶベルトコンベヤーみたいなもので。
自分はちっとも成長していないのに、大人のコンテナの保管場所に勝手に運ばれて行ってしまうから。
そこで、自分の意思とは関係なく、大人のレッテルを貼られてしまう。          

以前できなくて。
今、できるようになったことは、そんなにない。

ただ、少し物分かりがよくなって。
少しだけ、周りが見えるようになった気がするだけ。

でもきっと、それはただの自負で。
実際は全然見えてない。

今だって。

想いを伝えるだけのことが。
ちっともきれいにできなくて。
こんなにも不細工に、押し付けて。

それを自覚しているのに。 
正解が受け入れられないから、悪あがきしている。

こんな格好悪い大人に、自分はなってしまっている。             
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