レオニスの泪
「生活感のない家……」
静かな部屋で、ポツリと呟いてみる。
一番よく使うと言っていたリビングは、ちょうど二人掛け位の、もしかしたらちょっとひとりで横に寝そべることが出来る位のソファがあって、大画面のテレビがその前にあった。
テーブルは壁にくっつけてある細いものしかなく、椅子は黒のイームズチェア。
ダイニングテーブルというよりは、デスクと呼ぶ方が妥当な印象だ。
そのデスクの下は、本棚みたいになっていて、そこにいくつか英字の本が並んでいた。
完全に一人暮らし。
誰かの気配は微塵もない。
それはやはり神成が、ひた向きに『大切な人』を待っているからなのだろう。
そこに、その領域に、自分が入ってしまっていいのだろうか。
チク、と痛む胸に気づかないふりをしようと、首を振って、冷静さを保てるよう努めた。