レオニスの泪

形だけでも、と、掃除らしいと思える事を一通りしてみた。

一番よく使うと言っていたリビングを念入りにしてみて、次に洗面所等。
窓や網戸やサッシも、年末の大掃除並みに挑んでみたが、拍子抜けするほど汚れていなかった。


それから残っている二つの部屋の内、ひとつを開けて、医学書だかなんだか、手に取ってみた所で到底理解できそうもない本が膨大にあるのを見つけた。


「綺麗に整頓されてる……」

アルファベット順に、整列している本の背を指でなぞる。
ここまでくると、ここは図書館か、と突っ込みたくなった。

とりあえず、マイクロファイバーのハンディモップを使用し、今付着したかもしれない埃を拭い取ってみた。


そして、最後に残っている部屋の前に立つ。


「……たぶん寝室。」


これが終われば、もう帰ろう。

そう思っていた。

が。


「――――」


ここまで、写真なんか一枚もなかった。

神成の素の部分を知るヒントになりそうな、そういった小物もなかった。

だけど、この部屋に入って、最初に目に入ったものは。


「星……」


夜空に浮かぶ星達の写真が、天井や壁に貼られている。

決して数が多い訳ではないが、それまでの部屋とは明らかに違った。


 
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