レオニスの泪


――これがなくなったら、先生は必死になって探すのかな。

指先でつまんで高く上げ、見つめながら、ふとそんなことを思う。



そして、直ぐに罰悪く思った。

意地悪だと感じたからだ。


輪の中に見えるのは、天井にかかる星。


――いいな、先生にそんなにも愛してもらえて。


暫く羨望の眼差しを向けた後で、元の位置に戻した。


「喧嘩でもしたの?貴女が一方的に怒ってるだけ?」


物言わぬシルバーのリングに問いかけて。


「……ねぇ、もし、まだ好きなんだったら、戻ってきてあげてね。」


願掛けのように、語り掛ける。


「ずっと貴女を探しているみたいよ。」


それだけ言って、あとは無言で部屋を片付け、神成の家を出た。





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