レオニスの泪
「も、もしもし――」
慌てて出るが、慧の事と、時間帯を考えて、出てきた声は、控え目。
ついでに、緊張し過ぎて、呼吸もしづらい。
【こんばんは。ごめんね、急に電話して。】
携帯の向こうから聞こえてきたのは、少し、笑いを含んだような、柔らかい声。
神成の声は、落ち着いていて、優しくて、ふんわりとしている。
それを聞いていると、不思議だけれど、安心したり、ほっとしたりする。
だから、きっと、彼にとって精神科医は、天職なんだろうと思う時がある。
誰でも包んでしまうような眼差しと、その声は、生まれ持ってあるものなんだろうから。
「いぃえっ……」
案の定、今回私も、その声を聞いて、緊張する反面、じんわりとする温かさも感じていた。
【お土産の話を振ってみたものの、僕がどこにいるか祈さんに言っていかなかった気がするなと思って。】
「いぃ、や、あの……気にしないでください……」
【なんで?お土産って大事でしょ?】
「大事って言いますか、、あの、、」
相手はあくまで土産の話しかしてこない。
【僕は今、京都にいるんだよ。スタンダードに八つ橋とかでもいいし。】