レオニスの泪


「京都……」

なんだ、神成は今、京都に居るのか。
だとすれば、位置的に結構離れているから、昨日こっちの空は晴れていても、向こうの空は曇っていたかもしれない。

自分の見たのと同じ夜空ではなかったかもしれない。

そんな当たり前の事を、ふと思った。


【八つ橋、嫌い?】


耳元で困ったような声がして、我に返る。


「!いえ……でもあの、ニッキの香りがするのは、ちょっと苦手ですね……」


そう答えると。


【うーん……じゃ、カナエのケーキでも買っていこうかな。ケーキは好き?】
「あ、と、はい。結構、、なんでも……」
【分かった。】

お土産騒動は、八つ橋から大分飛んだ位置で――そしてかなり一方的に――落ち着いた。

満足そうに頷く神成を想像すると、おかしくなった。


【それと――明日、夕方には着くと思うんだけど、そしたら慧君も一緒にご飯食べに行かない?】
「え?や、でも、神成先生疲れてるんじゃ……」
【そういう時こそ、息抜きしたいんだよ。といっても、いつも行ってる知り合いの店に顔出しにいくくらいだけど。】







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