レオニスの泪
「就職して暫くは会社勤めだったんだけど、色々あって、家業を継ぐことにしたらしいんだ。」
「へぇ……と、いうか……同級生に見えませんね……」
まじまじと、神成の顔を見つめつつ、回想した店主を横並びにしてみる。
出逢った時からそう思ってはいたが、神成は私よりも年下に見える程童顔だ。しかし、さっき挨拶した店主は、私よりも十以上、年上だろうと思われた。
「――よく、言われる。」
さほど、嬉しくなさそうに神成がそう言って、肩を竦めた所で、料理が運ばれてきた為、その話は流れてしまった。
本当は、もっと、大学の時の話を聞きたかったのだが、何かに阻まれているかのように、その話題が食卓に上ることは、もうなかった。
「おいしーい!」
慧の感嘆の言葉に、神成が良かったと呟いて、お茶の入った湯呑に口をつける。
出てくる料理ひとつひとつはとても繊細で、今迄食べたことがない位美味しい。
ただ、出てくる量が、やたら多く、最後の方になってくると、食べたい意思に、身体が合わせようとしてくれる――別腹を作ろうとしてくれる――が、それもやはり追い付かず、持ち帰れるものは持ち帰ろうという展開になった。