レオニスの泪
「ご馳走様でした。」
「ごちそうさまでしたぁ。」
食後のデザートを終えて、お茶も頂き、そこらへんのバイキングよりもずっと満腹になった私と慧は、動かなくていいなら、動きたくない状態。
声を発するのもやっとやっとな感じだったが、私は平静を装う。
それができない慧は、自分のポコッと出た丸いお腹を、ぽんぽんと叩いた。
「時間が許すなら、落ち着くまでゆっくり休むと良いよ。」
神成はといえば、沢山の料理に対して余り手を付けず、私と慧の食べっぷりを楽しそうに見ていた。
だから、今、涼しい顔して、そんなことが言えるのだ。
これだけ食べておいて、恨むのはおかしいのだが、どうしてか神成に遊ばれているような気がして面白くない。
「し……」
神成先生は、と、言おうといた所で、携帯が鳴り、咄嗟に自分かと思ったら、話しかけようとした相手のものだった。
「ごめん――ちょっと席外すね。」
「あ、はい。」
部屋から出て行く神成の表情に、僅かに緊張が滲んで見えた。
――仕事かな?
なんとなくそう思った私は、もう入らないのに、お茶をひと口含んで、気を紛らわせた。