レオニスの泪
「ママ。ぼく、おしっこ……いきたくなっちゃった……」
「えっ」
神成が出て行って直ぐに、慧がそう言いだして、もじもじし始める。
「お手洗い……出たら分かるかな。お店の人に教えてもらえばいいか。おいで、慧。」
「うん。」
鞄を持って、部屋を出ると、直ぐにトイレの表示があったので、誰かに訊くまでもなく、すんなりと行くことが出来た。
完全な和のお店なのに、トイレはシャワートイレで、若干の違和感がある。
そして慧は、このシャワーを非常に怖がっていて、余り好まない。
更に嫌なのが――
「これ、女の人の声がするやつじゃない???」
水の流れる電子音が出る機械だ。
たまたま入ったショッピングモールのトイレが、入った途端女の人の声であーだこーだと説明を話したものだから、慧がびびって、それ以来恐怖症になってしまったのだ。
「大丈夫そうだよ。」
一歩入ってみても、話し出す気配はない。
色々理由をつけてなだめてみて、漸く慧が入る気になった。
「はい、ハンカチ。」
慧の濡れた手を洗面所で拭いてやる。
――神成先生戻ってきちゃってるよね。心配してるかな……でもわかるよね。
気持ち急ぎながら、トイレを出ると話し声が聞こえて、思わず立ち止まる。