レオニスの泪
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内科を受診して、少し経ってからのことだった。





「ほらほらほら、慧!早く靴履いて!早く早く!」



あろうことか、寝坊をしてしまった。


自分のミスなのだが、結局子供を急かしている自分に呆れる。


でもそんなことすら、構えない程に、時間が押し迫っていた。



―洗濯、掃除、えーと、ご飯を仕掛けて…ガス切って…



「ママー…、」



そこに甘えたようなか細い声がして、少しうんざりした気持ちになった。




「何!?」



「あんねぇー、昨日将太君がねぇー」




―うわ、今無関係っ



「ちょっと後にしてっ!」



咄嗟に出てしまったきつめの言葉に、ズキと胸が痛む。




「っていうか、まだ全然靴履けてないじゃん!?置いてある向きも反対だよ?さっきママ言ったよね?わかる?時間ないの!大体慧はいっつもさぁ…」



子供が萎縮しているのがわかっても。



どうしても口をついて出てしまうのが、出掛けの小言。
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