レオニスの泪


――『……ただの患者相手に、ここまでしていただく理由がありません。』


――『申し訳ないけど……、なんか僕は祈さんが心配なんだよね。』


――『理由というなら、それが理由かな。』


初めて会った時、私を助けた理由。

私を診察した理由。

私が風邪をひいた時、大変な思いをして、慧を迎えに行って、家まで送ってくれた理由。

土砂降りの雨の中、私を待っていた理由。

私を抱きしめて、安心させてくれた理由。

私を守ってくれる理由。

私を拒まない理由。

私を雇ってくれる理由。

私を誘ってくれる理由。


神成が私にしてくれたことは、全部挙げたらきりがない。

きりがないけど。

その理由はすべて一つに繋がる。

一言で、片が付く。


――アカリさんに、似てたから。


だから、私に近付いて、私を助けて、私の傍にいてくれたんだ。

近付いた、なんて。
あの笑顔が自分に向けられているなんて。

どれだけ自惚れてたんだろう。


あの笑顔も、優しさも、温もりも、眼差しも、全て。


アカリさんに向けられたものだったのに。
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