レオニスの泪




「あ、すいませんー。慧とお手洗いに行ってました。」


部屋に戻ると、神成が座って待っていた。
何食わぬ顔して、慧と入っていく。


「こちらこそ、途中で抜けてごめんね。」
「いえ、全然大丈夫です。」

申し訳なさそうな顔をする神成。
机の上には、湯気の立つ緑茶が用意されている。


「あれ、慧くんは、もう眠たそうだね。」


隣で、目を擦りながら、ふあと欠伸した慧を見て、神成が腕時計を確認した。


「もういい時間だ。それ飲んだら、送ってくよ。慧くん、今日は付き合ってくれて、どうもありがとう。」
「ふぁい」

神成は、丁寧すぎる程丁寧に、慧に接してくれている。

神成は誰にでも優しかった。

だから、慧も懐いていた。

「慧!ふぁいじゃなくて、ありがとうございましたでしょ。」
「うぅ……はぁい。ありがとうございましたぁ。」


だから、私も、自惚れてた。

勘違いしそうになるほど、神成が、優しいから。






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