レオニスの泪
カルテⅫ
あまりに久しぶりに、恋なんてしたものだから。
恋の仕方を忘れた。
恋の話もどういうのがそういうのか分からず、相談する相手もいない。
恋の始まりも忘れていたけど。
面倒なのに、愛おしいこの感覚は、ややこしくて自己中心的で、繊細で傷つき易い。
自分勝手に暴走しだすし、かと思えば、息を潜めてじっと待つこともあって、案外簡単に調子に乗るけど、直ぐに泣く。
ある程度の自由があった、恋に恋する時代は過ぎて、今は失敗出来ない位大人になった。
だから持たないで済むなら、持ちたくはなかった。
子供に愛を注ぐ立場にあるのに、自分も誰かに愛されたいと願うのは、御法度だと己の内で考えていた。
それより何より、好きな人なんて、もう絶対出来ないと思っていた。
大人になってからの失恋はきついと聞いている。
だけど、自分は狡くもなった。
自分の内側にある感情を隠して、相手を利用して、準備が出来たら、そんな自分の痛みや感情を切り離す覚悟を決めているのに、何喰わぬ顔して、生活する事が出来るんだ。