レオニスの泪
「あぁ……はい、ええ。あ、そうですね、まだ保育所です。でも4月からはーー」
小学校に上がるんです、と言いかけて、電話が切れたことに気付いた私は、小さく溜め息を落として、広げた求人誌に赤いマジックでバツを書いた。
その隣には、調理師免許取得に向けて始めた独学用の教科書が並んでいる。
試験自体は数ヶ月後。
でもそこまで、神成の家でお世話になる訳にはいかない。
早く決めなきゃと、焦るけれど、保育所の子がいるというと、直ぐに断られてしまう。
頭では理解していても、一縷の望みをかけて電話する訳だから、その都度ダメージはやはり食らう。