レオニスの泪

掃除を一通り終わらせたが、もう指輪に触れることはしなかったし、見ることもできるだけ避けた。


そういえば家の中に人が写ってる写真はひとつもなくて、それが不自然なようでもあり、納得できるような気もした。

仕事仕事仕事と何度も言い聞かせて、私情を挟まないよう神経を尖らせて。

ハウスキーパーとしては求められてないけれど、夕飯になるような料理を残していこうと持って来た材料を、台所に並べた。

調理に必要な道具は一通り揃っていて、神成が夜遅くに帰って来て食べても良いように、消化に良いものを作る。

煮ている間に、献立のメモを書いて、テーブルの上に残して置いた。


そうすることで、精一杯神成に感謝を示しているつもりだった。
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