レオニスの泪
「そうですか……」
そう言ったきり、警官は写真を制服の胸ポケットに仕舞い、その件に関しては暫く触れなかった。
様々な手続きの為に、直ぐに帰ることは出来ず、かといって、慧だけを連れて帰ってくれる人もいない。
私と慧は、二人。
そして、これからも、二人で生きていく。
その現実は、今迄も分かっていたことだけど、どこか、そんな自分自身をかわいそうだと思っていたきらいがあった。
卑下していた、部分があった。
だが、今回の件で、目が覚めたようだった。
慧を守るのは、私だ。
そして、その私は、誰かに守られるようであってはいけない。
母親は強くなきゃやってらんないの。
立ち止まり、弱くなる時もあっていい。
また、進めば。
寄りかかる誰かが、居て欲しいと願う時は、寄りかかられる役目を降りてから。
この子が、私より、強くなって、ひとりで世界を相手に、生きていけるようになってから。
今じゃ、ない。