レオニスの泪
「慧君、眠ってしまいましたね……もうこんな時間ですもんね。」
直ぐに帰してあげられなくてすみませんと、謝ってくれる警官こそ、私と同じで眠っていない。
意識を失くして、さっきより確実に重たくなった慧を抱えながら、椅子に座っている私は、ずり落ちてきていた小さいながら、成長を感じる息子の位置を戻してやる。
「……先程の話ですけど……」
徐(おもむろ)に、さっきの写真を取り出した警官は、それを机の上に置いた。
私は再び、その写真を見て、やはり見覚えはないし、ピンともこない、と思う。
「この女性宅で、慧君は見つかったんです。」
「――え?」
中々慧の発見場所を教えてくれなかったのは、そういうこと――慧の前で話して、思い出させるのを恐れて――だったのか、と頭の隅で納得しつつ、驚く。
「迷子になってたのを、保護してくださったんですか?」
私は、慧が、私を捜して外に一人で出て、行方不明になっていたと思い込んでいた。
だが、警官は首を振る。
「いえ。彼女は、実は木戸の、、元妻、なんです。」