レオニスの泪


「妻??」

頭が真っ白になって、繋がらない。
どうして、慧と木戸の妻が関係してくるのか。
理解できなかった。


「まだ、事情聴取中ですが、大方もう終わっていて……先程来た連絡によると、木戸の妻は、貴女を恨んでいたそうです。」
「うら……む……」


そう聞いて、ハッとした。
離婚した木戸は、夫婦関係はうまくいっていなかったと話していたが、それが実は一方的なものであって、妻は、木戸と離婚したいとは思っていなかったとすれば。


「子供が出来ないことを理由に、離婚届けを突きつけられ、納得できずに数日間木戸を尾行していたそうです。そうしたら、木戸は、保育所で男の子に話しかけていた。」

その男の子を迎えに来た女を見て、思った。
木戸は――夫は、この女のことを、と。

木戸にそのことを問い質すと、あっさりそうだと言ってのけた。
お前の事は、もう愛してないと。

愕然とした妻は、死にたいと思った。
数日間、泣いて過ごした。
家から一歩も出なかった。

だが、その内、怒りの炎がゆらゆらと燃え上がる。

どうして、私では駄目なのと。
そして思う。

その子が居るから?と。

子供が、自分には、できなかったから。
< 476 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop