レオニスの泪



そして、隙をつけ狙うようになった。

子供が、一人だけになる時を。

その時に、奪ってしまえばいいと思った。

あの人の心を奪った女が、自分と同じ思いをすればいいと願った。

そしたら、何のことはない。

夫が愛している女は、違う男の家に通っている。

夫という存在がありながら。

憎かった。

若さと、美しさと、そして、自分が欲しくても持てない、子を持てる権利。
その挙句、夫の心だけでは飽き足らず、他の男にも色目を使っているなんて――

そして、ついに待ちに待ったチャンスがやってくる。

夜中に、女が家を出て行った。一人で。

暫くすると、泣き声が聞こえた。
夜中の静けさの中、それは微かだけれどはっきりと。

チャイムを鳴らし、インターホンに囁く。

『ママが、救急車で運ばれたみたい』
『一緒に病院へ行こう』と。


「完全な被害妄想で、精神的にも異常な状態だったようです。」


警官が淡々と、木戸の妻の供述を話してくれるが、私の心は打ち沈んでいく。





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