レオニスの泪

慧をおんぶして、外に出ると、朝焼けが、昨日よりも更に寝不足の目に染みた。

出てくる涙は、昨日とも、さっきとも、違う。

片手で開いた携帯には、不在着信の嵐。

その相手には、慧が無事に見つかったというメールだけを送っていた。

連絡先を登録したのはつい先日だ。



――なんで、一人だけで頑張ってる、なんて思ったんだろう。


登録を消去する画面が、涙でぼやける。


『ママが居てくれるなら、僕はどんなことも頑張れる。』


どうして、慧は頑張っていると思わなかったんだろう。
自分が苦しめているかもしれない。
必要なものを与えられていないかもしれないと、思うことはあっても。

子供が、自分を見て、頑張ろうとしているなんて、考えた事はなかった。

支え合っている。


こんなにも近くで。

私達は支え合っていた。

どちらも、無力で、弱くても。

一人じゃ、なかった。

いつも、二人だった。

そんな慧を、どうして一人ぼっちにしてしまったんだろう。




親は、子供の世界だ。

母親は、子供を世界へつなぐ役割を持っている。

綺麗な世界だけを見せてあげたかった。

血なまぐさい社会は知って欲しくなかった。

青い空だけを、知って欲しかった。


だけど。

だけど。

どれだけ避けても、いつかは通らなければならない道に、逃げ道があることを、教えてあげないと。


私が、教えてあげないと。

そうじゃないと、雨嵐が来た後の、青空を、見ることが出来ない。

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