レオニスの泪
泣けないライオン
《おかけになった電話は、現在……》
耳にタコができる程、聞き慣れたアナウンスに、溜め息が零れる。
「またかけてるんですか?さっきから全然繋がらないみたいですけど、何かあったんですか?」
楠木が、物珍しそうに僕の方を見ている。
「いや、なんでもない。次の人呼ぶね。」
詮索されないように、話を切って、机に向かうが、さっきから一人の診察が終わる度に、合間に電話をかけているのだから、楠木が気がつかない筈がない。
マイクを通して、次の患者の名前を呼びつつも、心ここにあらず。
慧君が見つかったというメールに、ほっとしつつも、どこでどのような状態で、どんな精神状況なのか、考えると、心配でたまらない。
出来ることはなんでもしてやりたかったし、助けたかった。
なのに、朝方までは確かに鳴っていた電話は、今、電源が入っていないようなのだ。
『先生には、関係ないことですから。』
葉山祈にきっぱりと引かれた線。
『私は、アカリさんじゃありません。』
そして、拒絶。