レオニスの泪
狡い自分に、気付かれないなんて、自信があったつもりはない。
僕の事を好きだと言う彼女に、応えられない理由は、一つは、朱李の代わりとして自分が見ているという後ろめたさだ。
自分は、彼女の中に、朱李を見出し、贖罪しているのだ、と。
でも、それだけでは説明しきれない部分が、綻びのように、ほろほろと出てきて。
自分自身のことなのに、戸惑った。
二つ目の理由は、さらに重要だった。
彼女の告白は、予期していなかったとは云えない。
だけど、彼女自身は、本当に僕の事が好きだと言えるか?
彼女は患者だ。あくまで、病気なのだ。
その彼女が、一番弱っている時に助けを差し伸べた僕の事を好きだと。
それは、一種の刷り込みのようなもので、熱に浮かされているだけ。
一時的でしかない。
そんなケースは、多くある。
だから、想いは通じ合ってはいけない。
いや、通じ合う筈がない。