レオニスの泪

実際、僕に怒る権利なんかなかった。

彼女は、僕の一言で、頼る道を絶たれたと思っていたのに。

僕は自分勝手だ。

僕自身の手で、断ち切ったのに、曖昧な態度を取り続けて。


『ごめんて言ったのは――』

『この気持ちに名前を付ける権利が僕にはないのに、曖昧な態度を取り続けたことに対してだよ。』


尤もらしい嘘を吐く。

繋いで繋いで、断ち切って、また繋いで。

その結び目が切れてしまうと、駄目なのは、本当は僕自身の方だ。

精神科医は、強くないと出来ないって、誰かが言っていたっけ。

朱李も、僕の事を強いと言った。

葉山祈もきっと、僕の事をそう思っているに違いない。

実際は違うんだ。

同じ人間なんだから、強い筈がない。

ずっとずっと弱くて。

ただ、人の心の中身を、少しだけ知っているというだけで。

そして誰よりも、ずっと狡い。

居なくなって、困るのは、彼女じゃない。

僕の方だ。


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