レオニスの泪
怒濤の昼が過ぎた頃。
招かれざる客がやって来た。
「んー、今日はねぇ、、、味噌カツ定食、ご飯大盛りでお願いしようかな!」
無駄な元気を振り撒く、森。
「………950円になります。」
何故か、タイミング悪くレジを任されている、私。
「また葉山さんじゃん!こないだは混んでたけど今日は空いてるね!やっぱり今の時間が俺のグッドタイムだな!」
意味不明なことを言われ、理解できない、いや、したくない。
「50円のお返しです。」
「ありがとありがとー!」
完全に無視して、釣り銭を渡せば、カウンターにずぃっと森が身体を寄せた。
私は距離を大分開けて、トレイを持ち出す。
「申し訳ありませんが、お呼びするまで脇でお待ちいただけませんか。」
―つーか、どかないとトレイが置けないし。
「そんな棘々しなくてもー。今日は俺の後ろに居ないし、ちょっと恋バナしよっ?葉山さんもそんなんじゃかぴかぴに乾いちゃうよー。折角若いんだし!」
―こいつ、馬鹿か?
この大きな図体と一般よりでかい頭の中には、色恋以外のものは入っていないのか。そもそも製薬会社の人間のようだが、仕事…こなせているのだろうか。この男に頭を悩ませている同僚の顔が思い浮かぶようだ。
「そんな目で見ないでよー。ほんっと、葉山さんってライオンみたい。ライオンみたな怖い目してる。俺食われちゃいそー。」
―誰がお前の汚い肉なんか食うか!
今すぐに手にしているトレイで、奴の頭をぶったたいてやりたかったが、奥歯を噛み締めて、怒りを逃した。