レオニスの泪

久世は、はっきり口でそう言いはしないのだが、ずっと独り身でいる僕の事を心配していた。

だから、今回僕が連れを伴って来たことに驚きと喜びがあったに違いない。


『放っておいてくれよ』

そう言った僕に。

『放っておけるわけないだろ。やっと連れて来たと思ったら、なんで……』

久世はそう言ったから。

やっと、連れて来たと思った、と。

僕は言って欲しかったのかもしれない。

葉山祈は、朱李に似ていない、と。

誰かに――少なくとも、朱李を知っている人間に。

そうしたら、自分から動けるような気がしたのか。


「神成…」


天井を仰いでいると、声が掛かって、ゆっくり視線を下せば、久世が居た。

「久世……」
「この間は悪かった。」

唐突な謝罪に面食らった僕は、思わず黙ってしまった。

「朱李に似てるなんて言って……」

申し訳なさそうに、大きな身体を縮ませる久世を見て、僕は静かに笑った。

「本当のことなんだから、いいじゃん。」

僕自身の弱さ。
僕自身の問題だ。

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