レオニスの泪
店を出て、直ぐに空を仰いだ。
自分の癖が虚しい。
見つけたレオニスを見つめながら。
――君と一緒にいた時間は、あっという間に過ぎて行った。
朱李に語り掛けている自分も、虚しい。
――君が居なくなった時間は、もっとあっという間に過ぎて行くね。
心だけが、追いつけない。
今でも鮮明に、思い出せるのに。
一緒に見た桜の花も。
一緒に歩いた、あの道も。
一緒に行った、あの場所も。
僕の周りだけ、月日が流れて行っているような感覚だった。
だけど、確実に、僕自身も、時間に支配されている。
記憶の中の、朱李だけが。
年を取らないまま。
せめて、最期に、何か言葉をもらえたら。
僕はこんなに、辛くなかっただろうか。
朱李が最後に一体何を思い、何を憂い、何を望んだのか。
それさえ分かったなら。
何かしら言葉を交わせていたなら。
そうしたら、僕は、ここまで、朱李を追いかけていなかっただろうか。
――朱李、僕は、これからどうすればいいんだろうね。
行き場のない感情を、吐き出すように、溜め息を吐けば、空気が白く濁った。