レオニスの泪
レオニスの泪


「いってきます!」
「行ってらっしゃい。」

ピカピカの黒いランドセルが、太陽の光に反射して、眩しい。
目を細めて、ついこないだまで保育所に通っていた慧を家から送り出す。

桜の花が、どこからか飛んできて、舞っている。

小学校は、保育所よりも近く、一緒に行く友達も居て、慧は今の所楽しそうに学校に通っている。

「さぁ……て、私も仕事に行きますか。」

誰にでもなく、呟いて、支度と戸締りをしに、家に戻った。

木戸との一件があってから、慧は暫く私から離れることが出来なかった。特に夜は不安がって仕方ない。そのせいで、保育所も最後の方は休みがちだった。引っ越そうかと何度も考えた。でも、その資金もかなりかかり、現実的ではなかった。

警察官がパトロールついでに、立ち寄ってくれるようになって、まだ安心だけれど、慧と私の信頼関係も、修復に時間がかかった。

今回のことは、私のせいで、慧に危険が迫った訳で。
慧は私を心配して追いかけた。

それを理解しているから、何とも言えない。




< 505 / 533 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop