レオニスの泪
財布と携帯を小さい鞄に入れて戻ると、久世は店の外に出る為に歩き出す。
歩幅が違う為、私はその後を、小走りに追いかける格好になった。
「折角の休憩時間なのに、すみません。」
「いえ……あの、話って……?」
私が勤めているスーパーは駅の近くだ。
そして、外に出て直ぐの高架下に、ほぼ、人通りのない脇道がある。
そこの道沿いのガードレールに寄りかかると、久世は僅かに考え込むような顔をした。
「誤解しないでもらいたいんですが、別にずっと探してたり後を尾けたりした訳じゃないっていうこと……今日来たのは、本当に偶然なんです。ちょっと店の買い物をと思ったら、君を見つけて……違ったらどうしようと思ったけど……」
久世の言う事に同意するかの如く、彼がぶら下げているビニル袋がガサと音を立てる。
「そんな事思ってないですよ。」
相槌を打って見せるが、久世が何を話すのかの方が気がかりで、なんとなく落ち着かない。久世は、手にしている荷物に視線を落としたままだ。
「こんなこと言う権利は、俺にはないから、話しかけようか迷ったんだけど……でも、居てもたってもいられなくなって……。その……神成を助けてやってもらえませんか。」
「――え?」
顔を上げて、嘆願するかのように、そう言う久世を前に、私は言葉を失った。