レオニスの泪
――助ける、なんて。
外は暖かく、晴天で、朝よりもずっと強くなっている日差し。
私と久世の居る場所は日陰で、時折涼し気な風が通り抜けていく。
――私が助けられれば良かったと、思っているけど。無理だ。神成は私には何も求めてない。
「無茶なことを頼んでいるのは、百も承知です。でも、神成は、このままじゃずっと苦しんで、過去に囚われて……」
私の胸中など知る由もない久世は、真剣にそう言った。
「――でも、私はアカリさんの代わりには……神成先生がアカリさんの事を好きなら、神成先生がアカリさんに直接話した方が良いんじゃないですか。どんな理由で、居なくなったのか、知らないですけど、逃げないで、会いに行ったらいいんだと思います。だから――久世さんが頼む女性(ヒト)は、私じゃないんじゃないですか。」
私が言葉を選びながら、答えると、久世は眉を顰めた。
「朱李について、神成から聞いてないんですか?」
一番つついて欲しくない部分だ。
アカリさんについて、神成は話してくれなかったし、名前だって、ついこないだ間接的に知っただけで、本人の口からは何一つ聞いていない。
ただ、すごく愛していて、そして、今は居ない。
知っているのは、それだけだ。
「……神成先生は、私に何も話してくれませんでした……私はただの患者ですから。」
知りたかった。
曝け出してほしかった。
力になりたかった。
だけど、私は患者だから。
医者が患者に、自分の身の上話など、する訳がない。