レオニスの泪
久世はそんな私に気付いた風も、気にしている風もなく。
「俺、嬉しかったんです。神成が、店に君を連れてきてくれて。ああやっと、そういう人に出逢えたんだなって。神成は朱李の事があってから、人付き合いはほとんどしなくなってて……俺とも、去年こっちに引っ越してくる事が決まって、やっと少し打ち解けるようになったくらい。勿論、いつもひとり。だから、嬉しかった。けど、申し訳ないけど、君は、朱李に似てた。」
『あの時』の話をし始めた。
久世が、神成と、言い争いのようになっていた日。
「それで、神成がまだ、朱李を追っているなら、それはあいつにとっても、君にとっても良くないことだと俺は思うんで……。実はそれで、結構きつくあいつには言った時があったんですよ。」
「そう、なんですか。」
立ち聞きしてました、とは、口が裂けても言えない。
「でも、その後よく考えてみて、色々反省しました。神成は、君と君の息子と店に来たあの日、確かに良い顔をしてた。何も知らないうちのカミさんもそう言ってたくらいです。」
だから、次来た時には謝ろうと考えていた、と久世は続ける。
「それで、少し経ってから店に顔だしてくれた時に、俺が悪かったって言ったら、神成の奴、本当のことなんだから、いいって言ってくれたんだけど……神成は、君の事を患者とは言わなかった……いや、実際の所、患者とは思ってなかったのかもしれないって、俺は思うんです。」
「どういう、、、ことですか?」