レオニスの泪

ホームに電車が到着した、ブレーキの音がして。

私達二人には必然的に沈黙が訪れ。

そして、電車が、通り過ぎていく音がする。

ガタンタン、タタタン。

久世は、その間、私から目を逸らさなかった。
私も、問いかけたまま、その答えを待っていた。

静けさが、再び戻ってくると、久世は口開く。

「話してみて、君は朱李とは違う。全然違う。朱李っていうファインダーを通してでしか、見れなくなっていたのは、俺の方だったのかもしれません。」

そう言って、久世は寄りかかっていたガードレールから、身を起こした。

「神成も、君を患者として見ることで、朱李を通して見ることで、自分の感情を抑えていただけではないかって、思うんです。一種の自己暗示みたいに。」

「どうして、そう、言えるんですか。」

私が訊くと、久世は無責任かもしれないけどと言ってから。

「朱李の事を全部取っ払ってみたら、君と神成は、どこからどう見ても、恋人同士みたいだった。」

「そんなことは……」

「そうじゃなかったら、うちの店に連れてくるなんてことも絶対しない。神成にとって、君が特別な存在であることは確かです。どっちにしたってもう時間がないから、君がここにいるってことは、ダメってことなのかもしれないけど……でも、会ったらやっぱり言わずはいられなくて。なんとかならないかって、思ってしまって……」


久世の含みのある言い方が、引っ掛かった。


「 あの、……時間がないって??」


私が首を傾げると、久世は目を丸くした。


「聞いてないんですか??」
「何を……ですか?」
「あいつ、、、なんで言ってないんだよ。」



久世の表情は、明らかに曇り、困惑しながら一人言ちて。




「神成の奴、今日アメリカに発つんです。」



私が連絡を絶った事を後悔するような、真実を突きつけた。
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