レオニスの泪
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「すいませんっ、急用ができてっっ、そのっっ、あの、、、これからのシフト、どなたかと代わっていただけませんか??!!」
すごい勢いで、バックヤードに走り込んできた私を、同僚と店長が呆気にとられた表情で見つめた。
「……急用、って……」
「あの、今、たった今、知ったんですけど、その、今日、、、今日夕方の便で、アメリカに、行っちゃう人がいて、、、わた、私、その人にすごくお世話になったんですけど、、、お礼も、お別れも、、、きちんと伝えてなくてっ」
店長に、慌てて伝えようとするも、噛みまくって、落ち着きなさいと言われる始末。
「うーん。そんなこと言っても、人がねぇ……」
「いいよー、あと3時間、あたし代わるよ。」
店長の難しいよね、という言葉に、事の次第を見守っていた、同じ小学生の子を持つ同僚が、間延びした声で言った。
「えぇ、君もう上がるトコでしょ。」
「大丈夫でーす。稼ぎますー。だからぁ、葉山さん行かせてあげてください。」
「うーーん、まぁ、俺としては、人が居ればいいけど。」
一連のやりとりに、私はがばっと頭を下げた。
「ありがとうございますっ!」
「今度埋め合わせしてもらうからぁ。いってら。」
ひらひらと手を振る彼女と、仕方ないねぇと苦笑する店長に再び頭を下げて、私は猛ダッシュで駅まで走り出す。