レオニスの泪

久世の教えてくれた、神成との別れは、あまりに唐突過ぎて。

『なんでも、籍は大学病院にあるらしいんだけど、研究チームに誘われたらしくて。』

さっきまでの、久世との会話を反芻する。

『俺の店にそれを言いに来たのも、今朝なんで……詳しいことはよく聞けなかったんだけど、なんか、このままあいつを行かせたら、戻ってこないような気がして……悶々としながらいたら、君に会ったって訳で……自分勝手かもしれないけど……』

走って、走って、息は切れて。

『君なら、神成を助けられるかもしれないって思ったんです。』

駅について、空港までの切符を買う手が、動悸と一緒に跳ねる。


――《お掛けになった電話は――》

電話番号を消した所で、繰り返し唱えていた番号は、頭の中から消えなかった。

ホームについて、電車が来るまでの間、再三神成の携帯を鳴らすが、電源を切っているのか、繋がらない。

――馬鹿だ。

自分を罵った。

神成だって、自分に電話をくれていた時、こんな気持ちでいたのかもしれない。

――どうして、私は、逃げたんだろう。

彼と向き合わなかったんだろう。
ちゃんとお礼を言わなかったんだろう。

もっと早く、鍵とハンカチを返しに行かなかったんだろう。

こんなことになるまで、ずっと、放置していたんだろう。


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