レオニスの泪

空港内を駆けずり回りながら。

――会えた所で、自分に何ができるというのだろう。
――助けられる、なんて思ってない。

でもただ―――

自分の内にある、願いと向き合っていた。
それを炎を燈す燃料として、原動力に繋げる。


「はぁ、はぁ」


しかし、思いは逸っても、身体は正直に疲労を表し始める。

長い事走っても、余りに見つけられなくて、もう、こっちのターミナルではなく、もう一つの方なのかと諦め始める。


――ここに行って見つからなかったら、もう一つのターミナルに行こう。


そう考えながら、上の階にある、隅の小さな書店の前を通った時。



「――――――」




書店の裏の、片隅にある、人気のないベンチに、見覚えのある顔が、本を広げて座っていた。



「先生っっ!!!」



奇跡なんか、信じたことも起きた事もなかったけど。


この時だけは、奇跡だ、と柄にもなく思った。


「神成、先生……」




目の前に立ち、荒い呼吸でもう一度呼ぶと、漸く気付いた神成が、弾かれたように顔を上げて。


「祈……さん……?」


信じられないとでもいうように、私の名前を呼んだ。
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