レオニスの泪

数秒、或いは、数分。

短いような長い沈黙、絡み合う視線。

私の呼吸だけが荒く、遠くの方で、誰かが誰かの名前を呼んでいる声がした。

神成の周りだけが、場違いな程に、静かだった。


「どうして、ここに……」
「どうして言ってくれなかったんですかっ」

先に口を開いた神成の問いかけを遮って、私は、小さく叫んだ。

自分勝手な言い分だ。

「どうせ居なくなっちゃうならなんで、、、……」

自ら連絡を絶っておきながら。

「…………私に近付いたんですか?私を助けてくれたんですか?ただ、心配だったから?医者として?」


こんな風に、神成のことを責める資格なんて、どこにも持っていないのに。


今にも涙が出てきそうで、こみ上げてくる、怒りにも悲しみとも言える感情が堪えきれなくて、唇が震えている。


「それとも――、アカリさんを、重ねて見ながら私を助けて、それで、……楽になれたから?」


こんなんじゃ、ただの八つ当たりみたいだ。
まるで、私を利用したと言わんばかりだ。


ただでさえ私は、人と話すのが得意ではなく、人付き合いも、上手くできない。

こういう肝心な時に、どうしたらいいのか、何を言えばいいのか分からない。


こんなことが、言いたいんじゃないのに。

どうして、言葉が、出てこないんだろう。
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