レオニスの泪
私が、木戸の件で、追い込まれて、死んでしまいたいという衝動に駆られた時。
『…僕が、君を、治すから。』
『何があっても、』
『絶対に、僕を、忘れないで。』
神成は、そう言った。
あれは、きっと、【彼女】にも言った言葉。
そして、【彼女】は、【その時】、神成の事を忘れたと、神成は感じたのだろう。
誰よりも、神成自身が、彼女を治したいと願っていたのに。
彼女が死にたいほど辛い時、神成は思い出される事もなく、引き止める存在にもならなかった。神成は、そう思ったのかもしれない。
「――ごめんね。」
「……!」
問うた先、僅かだが、神成の眉間に皺が寄った。
苦しんでいる、ようだった。
謝って欲しいのではない。けれど、そう追い込んだのは自分なのかもしれない。
ベンチに座り、私を見上げる彼と、目の前に立って、見下ろす私は、いつかの真夜中の公園で出会った時のようだ。
あの時は、雨が降っていた。
今は、神成の纏う空気が、涙のように静かに降っている。