レオニスの泪
しかし。
「大丈夫?」
ぞくっとする言葉に反応して、取っ手に掛けた手が止まった。
「―って言葉は、時に残酷だね?」
続く問い掛けは。
「な…んで…」
否が応でも、私を振り向かせる力があった。
「大丈夫なフリをするのも、もう、しんどいでしょ?大丈夫じゃないってちゃんと言いなさい。」
くっきり二重と、長い睫毛。
キラキラした大きな黒目が、細められている。
私は今どんな面持ちで、目の前のヒトを見ているのだろう。
一言で表わすなら。
―泣きそう、だ。
唇は歪んで震えているから、マスクが覆ってくれていることに安堵した。
病院の庭で息が吸えなくなった時。
―大丈夫…じゃ、ないね。
あの時この男に掛けられた言葉で、少しだけ、救われたように感じたなんて。
口が裂けても言いたくない。
けど、本当は。
大丈夫じゃないって、叫んで泣きたい。
でも、慣れてなさ過ぎて、やり方がよく分からない。