レオニスの泪
カルテⅠ
「さて…と。じゃ、簡単に質問していくから、答えられる範囲で答えてね。」
左手に万年筆を取り、神成は半身デスクに、半身私の方へと中途半端な格好で言った。
―左利きなんだ。
別に観察していたつもりはないのだが、薬指に嵌まった指輪が、チラチラと光って目に付くので、そんなことに気付く。
―ていうか、結婚してるっていうのもびっくりだわ。
こんなに童顔なのに、30過ぎとは、あながち嘘ではないのかもしれない。
それに、20代にはない、変な落ち着きが神成にはあった。
話し方と態度だけ見れば、50を過ぎていてもおかしくないかもしれない。
にしたって、やはりキラキラ光るベビーフェイス。
色白で、艶やかな肌は、髭という存在を知らないのか。
「んー、本当に、このデスクこっち側になんないかな。メモとか取りづらいし。どうせ後でパソコンで打ち込むことになるんだけどねぇ…。」