レオニスの泪
ぶつぶつ呟く神成。確かにデスクは彼の右側であって、左側ではない。
よって、右半身がデスク側で、左半身は私に向けている。しかし、その手には万年筆が握られている。メモはデスクの上なのに、だ。
「ペン、置いたらどうですか?」
「…だよねぇ。もういいや。記憶することにする。じゃ、始めるよ。」
―変なヒト。
どうも、この病院の造りに慣れて居ないらしい。
諦めたように息を吐くと、今度は身体全てを私に向けた。
「今一番辛い症状は何かな?」
「息が…吸えないことです…」
これが一番キツかった。
「そうだろうね。過換気症候群に近い、と思う。いわゆる過呼吸って奴かな。吸えないというよりは、吐けないから苦しいんだ。本当に辛いと思う。そうなるようになったのは、最近?」
遡って考えてみるが、いつからだったのかよく覚えていない。
「わからない、、、です…でも、酸素が薄くなったのかな、とか思うことはよく、ありました。多分…去年位から…かな。こんなにひどくなったのは、ここ最近ですけど…」
神成の目は何を思っているのかはわからないけれど、居心地の悪さを感じる程の視線は送ってこないから、楽に話せた。