レオニスの泪
「その事について、君はどう思っているの?」
「どうって…?」
質問の意図がわからず、僅かに眉を寄せて神成を見た。
「彼に対して、何も思わないの?」
「そりゃ…」
思うことは沢山あるに決まっている。
だが。
「言った所で何にもなりませんから。」
相手に伝わる訳でもない。
理解(わか)ってもらえる訳でもない。
自分が辛くなるだけで。
子供にいえない父親像が広がってしまうだけだから。
きっぱり言い切る私に、神成は逡巡するような―一瞬だけ視線を私から自分の手元に逸らす―仕草をして。
「そうとも言い切れない」
再び私を正面から見つめた。
「僕はそこらへんを詳しく知りたいから、答えてみてごらん。」
―ごらんて。
私は幼稚園児か何かか!と、心の中でつっこんだ。
「―別に何も…」
強気に笑い、首を振って言いかけると。
「子供が出来たことで、失ったものは、彼より君の方が多かったんじゃないの?」
神成の質問が、ボス、と音を立てて自分の心に落とされたようだった。