レオニスの泪
「そうだろうね。ひとつひとつ挙げていってみて。僕が聞くから。」
私の視界には、自分の膝の上に置いた手が映っている。
神成の声は緩やかでのびやか。
記憶が当時に行き着くまで、そう時間はかからなかった。
昨日のことのようにはっきりと思い出せる、あの頃の自分。
「辛かったです。体調…ずっと悪いし…、勉強とかも大変だったし…。でも、、彼はわかってくれなくて、そういうの…。話した時も、面倒だって顔に書いてあったし…けど、自分も好きでそうなった訳じゃなくて…」
考えが足りなかった。
自分が愚かだった。
何度後悔しても、もう全てが遅過ぎた。
「友達にも相談できなくて…親は当たり前だけどすごく傷付いて…、だけど、、、、殺すことはしたくなかった…」
僅か3cmに満たない身体でも、心臓が動いている。
生じたのは、責任感、使命、そして愛情。
「どんどん…おなか大きくなるし…出産も、すごく怖かったし…大学進学も諦めなくちゃならなかったし…」
出産後も、付き纏ったのは、劣等感。
何も、何の資格も、ない自分。
ほとんど家に一人ぼっちで、子供を育てて。
陸の孤島だな、とよく思った。