レオニスの泪
「いえ、美味しかったです。」



取り繕うように、私も口角を上げてみたが、上手く笑えてないのは、ここ最近ずっと自覚している。




「君は、いつもそうやって、人を気遣っているのかな?」



机の上に空の缶を二つ置いた神成は、そのまま椅子に座ると、小さく首を傾げた。




「別にそういう訳では…」



「でも、無理したでしょう?」



「・・・・」




自分の考えが、相手にバレてしまっているから、尚の事、何も言い返すことができず、黙ってしまう。



「そんな構えなくて良いから。君があの珈琲を好きじゃなかったからと言って、僕は傷付いたりしないし、がっかりもしていない。むしろ何が嫌だったのか今後の参考の為に教えてもらいたいと思っている。」



―ヘンな人だ。



何度も思う。


この医者は、変だ。





「………ぬるっていう感じが、得意じゃなくて…その、、既製品の乳化剤があんまり…」



「成程、いかにも身体に悪そうだもんね。既製品じゃなければ良いのかな?」




「えと…はい。牛乳と珈琲だったら、平気ですけど…でもどちらかと言えばブラックのが、、好きです。」
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